学会報第45号

(2022年5月31日発行)

訂正

学会報45号6ページに、2023年度学術大会(同志社大学・予定)に関するワークショップ公募の記事がありますが、同大会では75周年記念企画が1日目午後から行なわれ、ワークショップの開催はありません。このため、公募も行なわれません。お詫びして訂正します。

(学会報46号においてこの旨の訂正を再度掲載します。)

理事長就任のご挨拶

日本法哲学会理事長 中山竜一(大阪大学)

 昨年11月に、森村進前理事長の後を受け、日本法哲学会理事長に選任されました。日本法哲学会のますますの発展のため、微力ながら全力を尽くす所存ですので、会員の皆さまにおかれましては、何とぞご鞭撻とご協力のほどお願いいたします。
 新たな事務局の構成メンバーは、11月の総会でご報告した事務局長の松尾陽理事(名古屋大学)に加え、今年1月開催の理事会で書記担当として承認された松島裕一会員(摂南大学)、さらに、この5月に開催された理事会メール審議にて会計担当として承認された土井崇弘理事(中京大学)となります。また、学会ウェブサイトの運営と管理については、引き続き、大屋雄裕理事(慶応大学)にご助力をいただきます。この学会報の刊行の遅れも含め、新事務局の立ち上げにあたってはいろいろとご心配をおかけしましたが、森村前理事長、関良徳前事務局長をはじめ、歴代の事務局を担ってきた理事の方々の温かいご助言とご指導のおかげで、ようやく軌道に乗りつつあるところです。
 企業や官庁のような組織とは異なり、大学は、個人事業者が集まった商店街のようなものだといった言葉をよく耳にします。学会の場合は、各成員の独立性や独自性がさらに重要となりますので、神社やお寺の境内に各種の屋台が立ち並ぶ縁日のようなものと言うべきかもしれません。会員の皆さまのご理解とご協力、そして理事の方々の献身的努力のおかげで、これまでの日本法哲学会の運営は安定的になされてきたと考えますが、長きに渡り、そうしたことが当たり前のように積み重ねられてきたのは、個人的には、各会員の独立性や独自性を互いに尊重し合う、本学会独自のカルチャーがあってこそであると理解しております。ですので、今後の事務局にあっても、何らかの新たな企画を立ち上げるといったことを目指すのではなく、これまでに培われてきた本学会の文化や精神風土を維持することで、各会員が各自の独立した研究を継続することを主眼に置いて、各種の業務に取り組んでいきたいと考えております。
 しかし、まさにそうした目的のために、今後検討していかなければならないことがいくつかあります。一つは「平時」にかかわる事柄であり、もう一つは「非常時」に関連します。
 まず、「非常時」の方から言えば、日本学術会議会員任命拒否問題や、新型コロナウイルスの感染爆発への対応が迫られた場合のような、外的要因によって発生した緊急事態への対処です。これらが起こった際には、森村前理事長のイニシアティブにより学会として適切な対応がなされたと考えておりますが、問題は完全には解消されておらず、いまだ残り続けています。また、別の緊急事態が新たに発生する可能性も決して排除できない以上、そうした場合を想定して、臨時理事会の開催による迅速な方針の確定と、学会ウェブサイト等を通じての会員の皆さまへの情報共有を心がけておく必要があると考えています。
 さらに、新型コロナウィル関連では、本年度の学術大会について一言お伝えしておかなければなりません。中央大学後楽園キャンパスを会場として、1112日(土)と13日(日)に開催の準備が進められていますが、報告論文とそれらへの質疑のウェブ掲載という形式で実施された一昨年度や、対面開催と同じだけの内容をそのままオンラインへと移し替えリアルタイムで開催された昨年度とは異なり、コロナ禍以前と同じ対面での開催が予定されております。しかし、感染状況悪化の場合には、昨年度と同じリアルタイムでのオンライン開催やその他の実施方法への変更の可能性もございます。この点をご理解いただくとともに、学会ウェブサイト・ホームページの「重要なお知らせ」欄を、適宜、参照していただけますようお願いいたします。
 次に、「平時」における学会運営に関連するお願いです。昨年度の総会でも少し話に出たかと思いますが、学会の財政状況が徐々に逼迫し始めており、それへの対処を真剣に検討しなければならない段階となりつつあるという問題です。学会としての「平常時」、つまり、これまで同様の学会活動を維持し、継続するためには──非常に心苦しいことではありますが──現在は6000円である年会費(ご存じのように、毎年の『法哲学年報』の書籍代もここには含まれています)の値上げを余儀なくされることも考えられます。もちろん、その前提として、新型コロナ禍への緊急対応として始まったオンラインでの理事会開催を今後も継続する可能性や、この学会報や、学術大会における配付レジュメの電子化を検討するなど、可能な限りの経費削減の方策を模索していく所存です。就任早々このようなお願いとなり大変恐縮ではありますが、とりあえずの頭出しとして、このような状況にあるということをまずはご了解いただけましたら幸甚です。また、会員の皆さまからも、学会運営の経費削減にかんするご意見やアイデアをお寄せいただけましたら、大変ありがたく存じます。
 何年も昔から言われていることですが、研究者や、研究者を目指す方々が置かれた状況は、必ずしも良くなってはいません。若い方々について言えば、任期付きで採用された少なからぬ数の若手の方々が極めて不安定な研究環境へと追いやられ、苦境にあるということが大きな社会問題となっていますし、中堅やベテランでも、各種の時限付きプロジェクトや、認証をめぐる不毛な大学間競争に動員され、疲弊し、自ら志した本来の研究ができないといった方々がおられることをよく知っています。決して軽くはないこうした現実を常に心に留めながら──しかし、法哲学という学問実践の可塑性と、それがもたらす多様な選択肢への楽観は決して手放さず──仕事を進めていきたいと存じます。何とぞよろしくお願いいたします。